成長

久しぶりに高校の友人達と会った。彼らとは長期休暇がある度に日程を調整して集まっている。今回の冬休みも例にもれず、「いつもの場所」で5人で遊ぶことにした。

 

昼過ぎに全員集合して、それからは高校時代と同じようにダーツで馬鹿騒ぎし、飽きたらいつもの流れでハイパーレーンに行き、腕が痛くなるまで球を投げ続けた。ボウリングの待ち時間にも「面白いものしりとり」なる遊び(参加者全員が面白いと思う単語のみでしりとりをする。面白くないと判断された場合はその面白さを訴えるか諦めて別の語を考える)を創作して喉が枯れるほど爆笑した。彼らとは何をしても楽しかった。それほどに気の合う連中だった。

 

夕食は予約した牛角へ向かった。すんなりと席に通され、焼き肉を食らいながら「牛角の塩キャベツは最高」だの「俺の育てた肉を横取りするな」だの心底くだらない話題に花を咲かせた。あのころから何も変わっていない。皆高校の時のままだった。それがただただ嬉しかった。

 

誰かが、もしかしたら私が、こう問いかけた。「お前は恋愛関係はどうなんだ」と。

 

その瞬間、彼らは「大学生」になった。いや元々「大学生」で、私が勝手に高校の頃に戻ったような錯覚を覚えていただけなのかもしれない。とにかくそれからの彼らは私の知る彼らではなかった。「サークルの子にコクられて今交際半年だ」「今付き合ってる子とはあんまりうまくやれてない」「ゼミの女子三人と重い関係になっている」「次の子はこの写真の二人のどちらかかな」ーー。「高校生」の私には到底理解できない世界の話が始まった。できるだけ平静を装っていたが、内心かなり動揺していた。いつの間にか皆私の知らない場所へ旅立ってしまったのだ、なぜ私を置いていくのか、そんな彼らをどうして素直に祝福できないのかーー。とにかく惨めだった。裏切られたような気分だった。いつまでも一緒だと無意識に信じていた友人らの変貌をすぐには受け入れることができなかった。

 

恋愛トークの種も尽きてきた頃。「無邪気に騒いでたあの頃に戻り……」と言いかけて、止めた。彼らは彼らなりに成長したのだ。それを否定することは許されないことに思えた。聞いていた一人が「俺もそう思う」と同意してくれた。けれど、それでも友人たちが成長をやめることはないだろう。彼らは「あの頃」から変わっていくことを受け入れて成長していく。いつまでも昔に固執する私に合わせてくれることは決してない。そしていつか私に見切りをつけて目の前から消えていくのだろう。

 

友人たちに見限られるのだけは嫌だ。だから私も変わる。お前達と同じ場所に立てるようにする。だから待っててくれ。俺を見捨てないでくれ。